Clásicos japoneses con furigana
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おおいがわおくやまのはなし
大井川奥山の話
木暮 理太郎
Lee 大井川奥山の話 (おおいがわおくやまのはなし) de 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 9724 caracteres · 20 pantallas
それで六日の朝は午前五時に出発し、五時半には上河内岳の頂上に着いていた。
海抜二千八百三米の山巓に立ちて、かくまでに冴え渡った展望観を恣にすることは、登山の最大快事であるというてよい。行手北の方には、象皮色をした聖岳が尨大な全容を曝露して、中腹に懸る二条三条の瀑から落ちる水の動揺までが見分けられる程に近い。其左には大沢丸岳や兎岳が或いは鋭い或は穏な金字塔を押し立てている。更に其左に銀の短冊でも懸け連ねたように雪を鏤めた、大海のはての蒼波かと怪まれる山の空線は、遠い北アルプスの連嶺である。西には、木曾駒ヶ岳の山脈が天半に紫紺の幔幕を張り渡して、峰頭は流石に鋸歯を刻んでいる。御岳と白山とが其上から紫地に銀糸を縫い込めた裾をゆたかに曳いて、美しい姿を覗かせる。恵那山は独り西南に離れて、つるりと円頂顱を撫でている観がある。南方は仁田河内岳からガッチ河内岳、光岳と続いて、一段遠く大無間山、黒法師岳の連脈が、寄せては返す幾重の大波のうねりを偲ばせる。
聖岳の右の肩には、ガッシリと根を張った古塔の如き赤石山がのし懸るように聳えて、所々偃松の古苔が赤茶化た石の瓦に蒼黒く蒸している。