Clásicos japoneses con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
Lee 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 319.771 caracteres · 617 pantallas
根岸の三ツ眼屋敷で、今日も、その著述の筆に耽っている。彼の著作は一種の生立ちの記ですが、書出しは祖先の三河時代の功業から起っている。そこに多くの自負があり、懐古が現われて来るのですが、同時に自らの現状との比較心が起って来ると、いよいよ平らかならざるものがある。それが激し来って、ついつい筆端に油の乗るようになる。さらさらと筆を走らせて、雁皮薄葉の何枚かを書きすまして、ホッと一息入れているところへ訪うものがありました。
シルクのお絹でもなく、芸娼院の鐚でもないが、神尾のところへ来るくらいのもので、左様に賢人君子ばかりは来ない。いずれも先日の悪食会の同人でした。
「何を書いているのだ」
「出鱈目の思い出日記を書いているのだ」
「つれづれなるままに、日ぐらし硯というわけかな」
「いや、閑にまかせて自分の一代記を書いてみているところだ、今は先祖の巻を書き終えて、次は父の巻にうつろうとしているところだ、第三冊が母の巻、それから自分の放蕩三昧の巻――自慢にもなるまいが、まあ一種の懺悔かね」
「せっかく大いにやり給え」
「懺悔にはまだ早かろうがな、善悪ともに書き残して置いてみることは悪くない――閑のある時分に、興の乗った時に限ってやって置くことさ、書いているうちに興味が出てくるよ。