Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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てんぽうのひこうじゅつ

天保の飛行術

野村 胡堂

Lee 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 14.024 caracteres · 28 pantallas

Aozora Bunko

「お通さん」

清作は紙入の中から、たしなみの薬を取り出しましたが、どうして口に含ませたものか、その工夫もつかなかったのです。

幸い奥村主殿の一行は、なんにも気が付かずに御前平の方へ登って行った様子、その姿の見えなくなる頃を計って、清作はお通の身体を自分の背に縛り付け、藪と岩角を頼りに、千辛万苦の末、漸く元の道まで辿り着きました。

其処まで来ると、少し下手に、昔白山詣での盛んだった頃建てた、小屋のあることを知っていたのです。

小屋へ入って、少しばかりの水を探して、お通の喉へ薬を通すまで、清作の苦心――いや、それよりも、あれほどお通が見せることを嫌った、左半面を手拭でかくしてやっても、見まいとするために、清作はどれほど無駄な骨を折ったことでしょう。

「あ、ツ、ツ、ツ」

「気が付いたか、お通さん」

お通は漸く正気に返りました、ひどい手傷で、命が助かろうとは思われませんが、此の儘死なれたら、さぞ口惜しいことだろうと思った、清作の熱心が、どうやらこうやら酬いられた様子です。

「有難う、――清作さん、この御深切は、死んでも、死んでも忘れません」

お通の美しい片面が、赤ん坊が母の顔を求めるように、清作の顔を追いました。