Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lee 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 508.883 caracteres · 1017 pantallas
山の端にかくれたのか朝の月影はもう見えなかった。――しかし、三十六峰の懐に重たく眠り臥している白雲の群れが、遽に、漠々と活動を起して天に上昇しはじめたのを見ても、天地は寂とした暁闇のうちにすでに「偉大なる日課」へかかっていることが分る。
その偉大なる日課のまっ先に、もう幾つか呼吸する間に、自分の死が、一片の雲よりも淡く、その気象の中から消されてゆくのか――と武蔵は雲を仰いで思う。
雲の抱く巨きな万象の上から見れば、一匹の蝶の死も一個の人間の死も、なんらの変りもないほどなものでしかない。――けれど人類の持つ天地から観れば、一個の死は、人類全体の生に関ってゆくのだ。人類の永遠な生に対して、よい暗示か、悪い暗示かを、地上へ描いてゆくことになる。
(よく死のう!)
と、武蔵はここまで来た。
(いかによく死ぬか?)
に彼の最大の最後の目的はあるのだった。
――ふと水音が耳につく。
一気に、ここまで脚を早めて来たので、彼は渇きを思い出した。岩の根へ屈んで水をすすった。水のうまさが舌に滲みる。彼は自分で、
(おれの精神は紊れてない)
ということをそれでも知った。そして直前の死そのものへ対して、少しも卑屈を感じない自己をすずやかに思った。