Clásicos japoneses con furigana
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てらさかきちえもんのとうぼう
寺坂吉右衛門の逃亡
直木 三十五
Lee 寺坂吉右衛門の逃亡 (てらさかきちえもんのとうぼう) de 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 9243 caracteres · 19 pantallas
そして、人々と一緒に門内へ入ると――たあーんと、長屋の戸へ、矢を射立てて、そこにいる人々を、威嚇するのが合図であった。正面の玄関の板戸が、掛矢の一撃で凄じい音の下に折れ砕けた。とん、たーあんと、矢の戸へ立つ音、庭へ走って廻る人々の足音、板戸の裂け、砕け、敷居が外れる音――一時に、そんな物音が起り、人々の働きが始まった。そして、それと同時に、表門が、軋って閉まりかけた。
(これだっ――)
と、吉右衛門は、脣を噛んだ。
(何処まで、俺を辱かしめるのだ? 何処まで、馬鹿にしやがるのか? 下郎には、人間の魂が無いと思ってやがる――誰が、お前等について行くものか。皆、殺されてしまえ。附人に、斬られてしまえ――畜生っ)
吉右衛門は、暫く、門の閉まったのを、睨みつけていたが、俯いて、歩きかけた。そして、両袖に縫つけてあった合印の布を、力任せに剥ぎとって、泥溝の中へ、叩き込んでしまった。
三
邸内に、幅の広い、どよめき、それから、部屋の中でらしい、鋭い懸声、喚声、板の踏鳴らされる音、障子にぶつかる音――それと一緒に、隣家の邸内にも、物音が、あちこちに起ってきた。