Clásicos japoneses con furigana
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あらし
嵐
島崎 藤村
Lee 嵐 (あらし) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 54.007 caracteres · 108 pantallas
」
と、私も考えずにはいられなかった。
私が地下室にたとえてみた自分の部屋の障子へは、町の響きが遠く伝わって来た。私はそれを植木坂の上のほうにも、浅い谷一つ隔てた狸穴の坂のほうにも聞きつけた。私たちの住む家は西側の塀を境に、ある邸つづきの抜け道に接していて、小高い石垣の上を通る人の足音や、いろいろな物売りの声がそこにも起こった。どこの石垣のすみで鳴くとも知れないような、ほそぼそとした地虫の声も耳にはいる。私は庭に向いた四畳半の縁先へ鋏を持ち出して、よく延びやすい自分の爪を切った。
どうかすると、私は子供と一緒になって遊ぶような心も失ってしまい、自分の狭い四畳半に隠れ、庭の草木を友として、わずかにひとりを慰めようとした。子供は到底母親だけのものか、父としての自分は偶然に子供の内を通り過ぎる旅人に過ぎないのか――そんな嘆息が、時には自分を憂鬱にした。そのたびに気を取り直して、また私は子供を護ろうとする心に帰って行った。
安い思いもなしに、移り行く世相をながめながら、ひとりでじっと子供を養って来た心地はなかった。しかし子供はそんな私に頓着していなかったように見える。