Clásicos japoneses con furigana
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Lee 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) de 松本 泰 (まつもとたい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 52.797 caracteres · 107 pantallas
それには El 32という文字があったのをよく記憶している。ELを頭字にしたエリザベス街はそこからグレー街へゆく途中であった。
私の訪ねあてた32番の家は表扉を緑色に塗った三階の煉瓦建であった。擦り空った石段の上に立った私は襟のつまった黒い服を着た老婦人に、仏蘭西人の事を訊ねると、
「ああ、貴郎の仰有るのはルゲナンシェさんの事ですか。あの方は久時私の許にいらっしゃいましたが、一週間前に議事堂の裏手のクインス旅館とかへお移りになりました。手紙が来たら受取っておいてくれ、土曜日に取りにくるからと仰有ってでした」といって老婦人は玄関の卓子に乗っていた一通の手紙を見せた。私の眼は手紙の表に記された、美しい女文字を見遁さなかった。
「この通り、手紙が待っているのですから、今日あたりお見えになるかも知れません」
私はそれだけきくと、横飛びにクインス旅館へ馳付けた。
「ルグナンシェさんは居りますか」私は帳場で二三の男と立話をしている若い番頭に問いかけた。
「ルグナンシェさんなら、たった今、その辺にいたっけ。部屋は五階の65番ですよ」
番頭はちらと私の方を見ただけで、すぐ向うをむいてしまった。