Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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まぼろしのたて

幻影の盾

夏目 漱石

Lee 幻影の盾 (まぼろしのたて) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.372 caracteres · 45 pantallas

Aozora Bunko

山と盛る鹿の肉に好味の刀を揮う左も顧みず右も眺めず、只わが前に置かれたる皿のみを見詰めて済す折もあった。皿の上に堆かき肉塊の残らぬ事は少ない。武士の命を三分して女と酒と軍さがその三カ一を占むるならば、ウィリアムの命の三分二は既に死んだ様なものである。残る三分一は? 軍はまだない。

ウィリアムは身の丈六尺一寸、痩せてはいるが満身の筋肉を骨格の上へたたき付けて出来上った様な男である。四年前の戦に甲も棄て、鎧も脱いで丸裸になって城壁の裏に仕掛けたる、カタパルトを彎いた事がある。戦が済んでからその有様を見ていた者がウィリアムの腕には鉄の瘤が出るといった。彼の眼と髪は石炭の様に黒い。その髪は渦を巻いて、彼が頭を掉る度にきらきらする。彼の眼の奥には又一双の眼があって重なり合っている様な光りと深さとが見える。酒の味に命を失い、未了の恋に命を失いつつある彼は来るべき戦場にもまた命を失うだろうか。彼は馬に乗って終日終夜野を行くに疲れた事のない男である。彼は一片の麺麭も食わず一滴の水さえ飲まず、未明より薄暮まで働き得る男である。年は二十六歳。それで戦が出来ぬであろうか。