Clásicos japoneses con furigana
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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
Lee 思い違い物語 (おもいちがいものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 44.840 caracteres · 88 pantallas
と声をあげ、彼女の前に坐って、さも愉快そうに手を擦り、さも秘密そうに、眼くばせをした。
「やってますね、はは、どうです、朝の茶漬は乙なもんでしょう、この味を知らない人間は哀れなもんですよ、おい、おれにも早くして呉れ、腹が減って眼がくらみそうなんだ」
津留は喰べかけた茶碗と箸を持ったまま、じっと俯向いて黙っていた。
「どうしたんです、今朝はひどく温和しいがどこかぐあいでも悪いんですか」
「構わないで下さい」
津留はこう叫んで眼をあげた。とたんにその眼から涙がこぼれ落ち、その顔がくしゃくしゃになった。
「あなたはわたくしなんぞ、わたくしなんぞ、あなたは」
こう云いかけて、喉が詰ったものか、いきなり立って、ばたばたと台所から逃げだしていった。泰三はあっけにとられ、――正しく口をあけたまま、――茫然とそのうしろ姿を見送った。そして、なにか口の中でぶつぶつ呟いたが、やがて自分の前に膳が据えられ、箸と茶碗を持って、ざくざくと二た口ばかり掻込んだとたん、突如、ぷっと口の中の茶漬け飯を吹き出し、「あっ」と喚き、茶碗と箸を放り出し、自分の膳と津留の膳に蹴つまずき、がちゃんどたんぴしりだだだと、近来にない派手な物音を立てながら、「待って下さい、津留さん、待って下さい、云うことがあるんです、待って下さい」