Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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かいいくろひめおろし

怪異黒姫おろし

江見 水蔭

Lee 怪異黒姫おろし (かいいくろひめおろし) de 江見 水蔭 (えみすいいん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 12.963 caracteres · 26 pantallas

Aozora Bunko

背筋の虫に螫された痕、その痒さを留める役目なので、蚊帳の中に入っても直ぐと後へ廻った為、顔を見られずに済んだのであった。

もうここまでに成ればこちらのもの、隠し持ったる鎌で、後から、高田殿の喉笛を掻切り、父兄の仇の幾分を報じるのだ。それから又表座敷へ廻って、越後守光長の首級をも貰い受けよう。そういう復讐の念に燃えるので、滝之助は赫々と上気して、汗は泉の如く身内に吹き出た。

「さァ苦しゅうない、寝間衣の上からでは思うように通るまい、肌襦袢の薄い上から、爪痕立て、たとえ肌を傷けようと好い程に」

高田殿は狂気の如く身を悶悩させるのであった。

今! 今! 今を除いていつの日ぞ。父や母や兄の仇、松平家を代表した一人に、怨恨の鎌の刃とは、思えども、初めて接した貴人の背後、物怯してブルブル戦慄して、手の出しようがないのであった。

熊も熊、荒熊の如き武者修業の背後から、何の躊躇もなく鎌の刃を引掛けたが、尊き女の切下げ髪、紫の打紐にキリキリと巻いたるにさえ、焚籠めてある蘭麝待の名香。ついそれを鼻の先に嗅ぐからに、反対にこちらが眠り薬に掛ったかの様、滝之助は恍惚として、つい鎌を取落した。