Clásicos japoneses con furigana
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こいのでんしちろう
恋の伝七郎
山本 周五郎
Lee 恋の伝七郎 (こいのでんしちろう) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 29.650 caracteres · 60 pantallas
んだ。本当におれは嬉しいんだぜ」「わかってるよ、おいらにもそいつはわかってるんだ、そして」と、忠太は相手の盃に酌をし、たいそうしんみりした調子でこう云った、「そして、おいらだって同じなんだ、伝さんとこうしているときだけは誰に遠慮もなく、九尺二間の釜戸将軍で手足を伸ばしていられるが、世間へ出れば半人まえの扱いしかしちゃあくれねえ、なぜだ、伝さんなぜだと思う」「…………」「こいつはなあ伝さん、おれもおめえも真っ正直すぎるからだぜ、空ぞらしい世辞が云えねえ、人の眼をくらましてうまい汁を吸う智恵がねえ、ごまかし仕事が出来ねえ嘘がつけねえ、詰り世間の奴等に云わせれば、これが世渡りの方便だということが、おめえとおれにはどうしてもできねえ、半人まえだの愚か者だといわれるのはそのためなんだ、おれの親父もそれで通町の店をたたんじまったのよ」
忠太郎の父は通町で小さな金物店をやっていたが、馬鹿という字が付くほどの正直者で、はじめ親譲りのかなり大きな呉服屋を詰らなく潰してしまい、その金物店も親類の肝入りで持ったのだが、忠太郎が十五の年にはそれさえもちきれなくなり、ついに店をたたんでこの裏長屋へめり込んでしまった。