Clásicos japoneses con furigana
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おんをかえすはなし
恩を返す話
菊池 寛
Lee 恩を返す話 (おんをかえすはなし) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 9018 caracteres · 19 pantallas
細川家の重器の一つであった。甚兵衛は素破事こそと思った。このお咎めを自分一人で負うて腹を切って、惣八郎の命を助けようと思った。
しかし、藩主忠尚侯は、彼が意気込んで言上するのを聞いた後、「あれか、大事ない。余の器を出しておけ」と何気なくいわれた。
彼は余りに苛だたしい時には、いっそ惣八郎を打ち果して死のうかと思った。しかしそれは自分が、恩を返す能力のないことを自白するのと同じだと思った。
寛文三年の春が来た。甚兵衛は、明けて四十六の年を迎えた。天草の騒動から数えて二十六年になった。その間、報恩の機会はついに来なかったのである。
彼は半生の間、ただ一心にそのことばかりを考えていたので、身後の計をさえしていなかった。配偶のきさ女との間には、一人の子供さえ無かった。が、恩返しのために、一命を捨てる時などに心残りのないことを結句喜んだ。
今年の春から、彼は朝ごとに、咳をした。その度にしばらくは止まなかった。彼は初めて、朧げながら死を予想した。前途の短いのを知ってからは、是非為さなければならぬ報恩の一儀が、いよいよ心を悩ました。
ところが、時はついに到来した。