Clásicos japoneses con furigana
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あくいんねんのうらみ
悪因縁の怨
江見 水蔭
Lee 悪因縁の怨 (あくいんねんのうらみ) de 江見 水蔭 (えみすいいん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 13.705 caracteres · 28 pantallas
「お客様、もう出しますよ」と女船頭の声。
四
「どうも万事がトントン拍子、この風に白帆を張って川上に遡るのは、なんとも云えませんな。おやおや、弁天様のお宮の屋根が蘆の穂のスレスレに隠れて、あの松林よりも澪の棒杭の方が高く見えますな。おや川尻は、さすがに浪が荒い、上総の山の頂きを見せつ隠しつは妙々。姐さん、木更津はどっちの見当かね」と宗匠は相変らず能く喋べった。
「木更津は巳の方角ですから、ちょうどこうした見当で御座います。海上九里と申しますが、風次第でじきに行かれます」と娘は手甲に日を受けながら指示した。
中間の市助は艫の方に控えながら。
「宗匠、後ばかり見ねえで、まア先手の川上をお見なせえ。羽田の漁師町も川の方から見ると綺麗だ。それに餓鬼どもが飛込んで泳いでるのが面白い」
「先の方を見ると、大師様の御堂の御屋根が見えるくらいで、何んの変哲もないが、後の方をこうして振向いていると、弁天様の松林が、段々沈んで行くのが見えて嬉しい」
「なに、生きた弁天様のお顔が拝みたいのでしょう」
「実は金星、大当りだ。はははは」
二人が他愛も無い事を云って笑い騒ぐのに、若殿のみは一人沈黙して、張切った帆の面をただ見詰めていた。