Clásicos japoneses con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 200.903 caracteres · 400 pantallas
そしてそのことの可能性やら、世人の輿論やら、または一朝不成功に帰した場合までの結果を、彼らしい用心ぶかさをもって綿密に考えつめていたものだった。
払えども払えどもたかって来る馬蠅のように、それはもう心の内から追いきれない彼の白日夢となっていた。かかる悪夢が、いつの間に彼の毛穴から忍び入って満身の邪気となったものか、彼の聡明ももう反省する力をすでに欠いていた。
光秀は、五十五年の生涯のうちで今ほど、自己の聡明を、ふかく恃み、またかたく信じたときはなかった。
客観的には、彼の知性というものが、いまほど危ない亀裂を呈した例はあるまいと思われるのに、彼自身には、その正反対が信じられていた。
(――自分の思慮には水の漏るほどな錯誤もない。誰がいま光秀のこの腹中を知ろう)
ひとり綿密に練っていたその腹中の企図も、坂本にいたあいだはまだ、実行にうつすべきか、実行すべきでないか、迷いは半々であったが、今暁、下加茂の河原で、四方田又兵衛から二度目の確報を聞くとともに、光秀はぞくと身の毛をよだてて、
(――今だ)
と、心のうちに決して、
(天、光秀にこの時を与え給うものである)