Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 200.903 caracteres · 400 pantallas
また、右側の大襖のとなりもかたという物音ひとつ聞えないが、さっき自分をこれへ導いて来た斎藤利三が唾をのんで聞き耳たてている気がする。その内蔵助利三のほかにも、素槍をかかえ刃を握りしめた幾名かの者が同じように身を硬めていることは慥かである。――光春の感覚はあきらかにそれを見抜いている。
こういう中へ、かりにも自分という者を引き入れて、そしてただ一言いのちをくれぬかという光秀のつきつめている心の底を窺うと、光春には、その無情も、その陰険な仕打も、恨む気にはなれなかった。
――愍れが先に立ってである。
こうも思い詰めてしまわれたものか。あの聡明な人が。あの理性に富んだ人が。いったい自分が幼少から見ていた明智十兵衛という者はいずこに失せてしまったものかと、いまはその人間の形骸のみを見つめているような心地しか持てないのであった。
「光春。――返辞は?」
われともない容子で、光秀はにじり寄って来た。光春は、彼のその息づかいに、重病人の熱のようなものを感じた。
「わたくしに、一命をくれぬかとは、そも如何なるわけですか。左馬介には解しかねますが」
初めて彼はこう答えた。