Clásicos japoneses con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 190.406 caracteres · 381 pantallas
「さては」
早くも義元は、二、三の侍臣だけを連れて落ちたな――と、甚内は覚った。幕から幕を覗いて行った。あらかたの幕は切り裂かれて落ちているか、血に染んで踏みつけてあった。
「そうだッ、馬備え?」
徒歩では落ちまい。すると馬繋ぎへ駈けつけたに違いない。だが、たくさんな幕と乱軍の営内では、どこが敵の馬繋ぎ場か、ちょっと見当もつかないのである。
それに、馬もじっとしてはいなかった。雨と、剣光と、血の中を、馬も狂って、何十頭となく駈けまわっている。
「どこへ潜んだか」
甚内は、槍を立てて、乾からびた喉へ、鼻ばしらから伝う雨水のしずくを飲み下していた。
すると直ぐ眼の前を、自分を敵とも気がつかずに、一頭の青毛の駒の狂うのを、懸命に曳いて行く武者がある。
金砂子の覆輪を取った螺鈿鞍に、燃ゆるような緋房をかけ、銀色の轡に紫白の手綱。――甚内の眼は射られた。
まごうなき大将の乗用である。眼をつけていると、駒はすぐ先の一叢の松の木蔭へ曳かれた。そこにも、幕が仆れている。また、まだ懸けめぐらしてある幕が風雨に大きな波を打っている。
甚内は、一跳びに、
「ござんなれ」
と、ばかり近づいた。