Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 180.256 caracteres · 361 pantallas

Aozora Bunko

彼の風体は、ただの土民より惨めだった。髪はよごれ、埃や草の実がたかっていた。顔は汗のすじを描いて、黒く赤く、眼ばかりが、飛びつくように、信長のほうを見て駈けて来たのである。

「こらッ、何処へ」

「無礼者ッ、突き殺すぞ」

日吉の眼には、遮る槍も見えなかった。

が――槍の柄で、向う脛を払われたので、信長の馬前から十歩ほどてまえで、一度、もんどり打って倒れた。

しかもまた、刎ね起きて、

「――望みあんなる! 望みあんなる! わが君ッ。わが君ッ!」

喚きつつ、槍のあいだを駈け、信長の駒の鎧へ、つかまろうとした。

「穢い奴めッ」

信長が、一喝した時、日吉のうしろから追いすがった士の一人が、襟がみを把って、彼の体を、大地へ抛りつけた。

それへ向って、

「こいつ!」

と、槍が走ろうとした時、

「突くな」

信長がいった。

見も知らぬ――そして穢い姿をした異様な小男が――自分へ向って、家来でもないくせに、わが君、わが君、と呶鳴りながら駈けよって来たのが、ふと信長の眼を注意させたのであった。

いや、もっと大きな理由は、日吉の満身に燃えていた、希望の焔が、信長をして、思わず、

――待て!