Clásicos japoneses con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 180.256 caracteres · 361 pantallas
それ以来は藪山の家に寝たっきりで――妻のおえつの看護をうけていたが、年暮の寒さをこえて、この正月になっては、腹部にうけた槍傷が毎日痛むらしく、苦しげな呻きがのべつ洩れていた。
――その血膿に汚れた良人の肌じゅばんを、おえつは、屋敷の中を通ってゆく流れで洗っていたが、ふと、
「誰であろう? ……暢気らしゅう……」
と、腹の立つように、身を伸ばして、声のする方を見まわした。
光明寺山の中段にある屋敷なので、土塀の外へ顔を出すと、麓の道も見える。中村の耕地も見える、庄内川や尾張の平野もひろびろと眺められる。
寒々と、正月の陽は、平野の果てにうすずいて、きょうも暮れかけていた。
糸を繰るのも
よるといい
日の暮るるをも
よるという
くるくるしくも何かせむ
くるより待つこそ
久しけれ
ヤヨ
久しやな
大きな声であった。今の社会のけわしさも人間苦も知らない者の声だった。室町末の人々に謡い飽かれた歌が、この尾張あたりへ伝って来て、農家の娘の糸繰歌などに訛ってよく謡われている。
「……おや。日吉じゃないかしら?」
おえつは、麓から今、そう謡いながら登って来る者を遠くから見てびっくりした。