Clásicos japoneses con furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lee 新潮記 (しんちょうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 155.541 caracteres · 305 pantallas
「おい、こっちだこっちだ」
大助はびっくりしてふり返った。いかにも町はずれらしい、ごみごみした家並の、細い路次のあいだに一人のさむらいが立って手をあげていた。早水秀之進だった。
「あっ早水」
「人に見られるなよ」
秀之進はくるっと踵を返した。
「やっぱりあんただったな」
「黙って来たまえ」
秀之進は町裏へぬけると、青々と伸びた稲田のあいだの径を、さっさと東へあるいてゆく。田の畔には榛の木が植えてあるので、そこまではいると街道からは見えない。秀之進はその細い径を、まるで大助のことなど忘れたように、すたすたと黙って先へあるくばかりだった。
「もういいだろう」田のあいだをぬけて、北から東へまがって来る新しい道へ出たとき、はじめて秀乏進はふりかえった、「せわをかけたな」
「それだけですか」大助は額の汗を押しぬぐった、「冗談じゃない、こっちはわけがわからないものだからまごついたのなんの、はじめに子供にひと言そういって呉れれば」
「云えば事情が違ってくる」秀之進はしずかに遮った、「あいつは土浦の向うから跟けて来た、ようすをみるとおれを斬るつもりらしい」
「……斬るって?」
「眼の色がそうだ、べつにそれを怖れはしないが、御用をはたすまでは大切なからだだから、なるべく無事に眼をのがれようと思った、それでひとまず武蔵屋へ草鞋をぬいだのさ」