Clásicos japoneses con furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lee 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 138.172 caracteres · 277 pantallas
「それは言えんさ、それにもう、すでに過去のことだ。」
いきなり、錦子の両の頬のえくぼを、両方の人差指で、はさむようにキュッと押して、
「怒ってるの。」
と顔をもっていった。
その手を払って、錦子は顔を反した。細った横顔にも、弾力のない頬の肉にも、懊悩のかげはにじみ出ているのだが、美妙は、手のうらをかえすように別のことを冷たく言った。
「此処の家も、もう越すんだ。」
錦子はそれをきくと、拗てなんぞいられなくなって、すぐその話の筋へ引きこまれていった。
「君は何故っていうのですか。何故ってね。僕は、このごろ四面楚歌さ。貧乏になったのも知ってるでしょう。何にも目ぼしい作書いてないものね。そりゃあ、演劇改良会をつくろうと思って、脚本なんぞ書いたりしてはいるがね、白い眼を剥いてる奴があるから――落目さ。そりゃあ、僕だって、このままでないという事は、自信はあるけれども。」
「どうしても、このお家を、お離れにならなければ、いけませんの。」
不自由なく育った錦子には、住居を売って立退くということは、没落ということを、眼で見ることだと思った。
「あたしが、いけなかったのでしょうか。