Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

Lee 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 138.172 caracteres · 277 pantallas

Aozora Bunko

「あたしは、一度でも、こんな気持ちのところに、いたことがあっただろうか――」

お雪は思いがけないほど、明澄な天地に包まれて、昨日まで、暗い、小雨がちな巴里にいた自分と、違った自分を見出して、狐につままれたような気がした。

「巴里は、京都を思い出させたようだったからね。」

モルガンは、此処へ着くと急に、お雪が、昔のお雪の面影を見せて、何処か、のんびりとした顔つきをしているのが嬉しかった。もともと淋しい顔立ちだったが、日本を離れてから、目立って神経質になり、尖りが添っていたのが、晴ればれして見えるので、

「以前のお雪さんになった。」

と悦こんだ。

ニコリと笑ったお互の白い歯にさえ、碧さが滲みとおるようだった。

「何見てるです。」

と言われると、お雪は指のさきを、モルガンの眼のさきへもっていって、

「手のね、指の爪の間から、青い光りが発るようで――」

と眼をすがめて見ているお雪があどけなくさえ見えるのを、モルガンは、アハハと高く笑った。

「あなたは、ニースへ着いたら、拾歳も二十歳も若くなった。もう泣きませんね。」

「あら、あて、泣きなんぞしませんわ。」

「此処の天の色、此処の水の色、あなたを子供にしてくれた。