Clásicos japoneses con furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lee 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 576.941 caracteres · 1138 pantallas
「はい。お手紙。」
何かその妹の声に常の声よりわざとらしさが響いたので、矢代はすぐ千鶴子からのも中に混っているのを感じ、眼をその方へ向けなかった。
「お元気ないのね。叔父さん何んか仰言って。」幸子は下へ降りようとせず彼の傍へ坐り込んだまま顔を見ていた。
「どこの桜もよく咲いていたね。」と、彼はひと言いってからふと書類へ視線を落としたが、まだやはり手に取り上げようとしなかった。
「叔父さんはあたしも京都へ行くように仰言ったでしょう。」
「いや、そんな話はないよ。」
「嘘だわ。あたし電話で忍さんに、そうお願いしといたんですもの。お話あったにちがいないわ。」
忍との間で、その点にも少し矢代は触れたと思ったが、それを妹に答えるには、まだ見ない眼前の書類の内容の方が重すぎた。千鶴子の手紙の返事が、自分の京都行きと一緒に千鶴子も由吉と出られそうな模様なら、今は幸子への自分の答えも幾ちか変るかもしれぬ不愉快さを彼は感じた。そればかりではない。彼の答えを待ち構えている幸子の眼もとに早や千鶴子の手紙の中を察した鋭さがあり、兄と自分の間を邪魔しているものへの、露き出した爪も見えた。