Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lee 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.813 caracteres · 302 pantallas

Aozora Bunko

春とは言いながら未だ冬らしい朝が来た。山本さんは部屋にある姿見の方へ行って、洋服の襟飾(えりかざり)を直して見た。僅(わず)かばかりの額の上の髪を撫(な)でつけた。帽子を冠(かぶ)って、旅の鞄(かばん)を提げて、旅舎(やどや)から小川町の停留場へと急いだ。

朝日は電車の窓に輝き初めた。枯々とした並木を隔てて、銀座の町々は極く静かに廻転するように見えた。

約束の時間より早く、山本さんは新橋の停車場(ステーション)に着いた。汽車に乗込もうとする客だの、見送りに来た人達だのが、高い天井の下を彼方此方(あちこち)と歩いていた。山本さんもその間を歩き廻って、お新の来るのを待受けていた。次第に不安が増して来た。果して彼女は来るだろうか。お牧を離れて彼と二人ぎりの旅、それを心易く考えるだろうか。山本さんは安心しなかった。

そのうちに、幌(ほろ)を掛けてやって来た車が停車場前の石段の下で停った。彼女だ。

いかに気質を異にし、いかに心の持ち方を異にした人達で、この世は満たされているだろう。東京から稲毛(いなげ)あたりの海岸へ遊びに出掛けるのに、非常にオックウに考えている人すらある。