Clásicos japoneses con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lee 春いくたび (はるいくたび) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 70.094 caracteres · 142 pantallas
千浪はくやしそうにいった。
「お兄さまの悪口をいって、お兄さまが裏切者なんですって、卑怯者で不忠者ですって、そして千浪がそんなことうそよっていったら、みんなでどろをぶっつけたんだわ」
「――まあ!」
若菜はおどろいて向こうを見た。
侍屋敷のつじのところに、五、六人の少年たちがこっちを見ながらはやしたてている。みんな身分のある武家の子たちだった。
「千浪、おまえは家へ帰っておいで」
そういって若菜はずんずん少年たちの方へ行った。
兄の菊池伝四郎は、槍組の五十人頭として戦に出ている、菊池家は吉野朝の勤王家として名だかい、肥後(熊本県)の菊池の血統をひいているもので、大村城でもすじ目の正しい家柄として人々からうやまわれていた。
若菜は十五歳の少女であったが、
――裏切者、不忠者。
といわれることが、武士にとってどんなに大きなはじであるかということはよく知っていた、ことに菊池家は勤王の血統で、大義名分を命よりもたいせつにする家柄である。
――そんなうわさをするものはゆるしてはおけない。
そう思って近寄っていった。
少年たちは意地の悪い眼つきで、腕をくんだり胸をつきだしたりしたまま、へいぜんと立っていた。