Clásicos japoneses con furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lee 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 47.663 caracteres · 97 pantallas
草双紙は、かの薄墨草紙で、むごい主人の手討に逢って、杜若の咲く古池に沈められたお文という腰元の魂が、奥方のまえに形をあらわしてその恨みを訴えるというところで、その幽霊が物凄く描いてあった。稚いお春もこれには余ほどおびやかされたらしく、その絵を指して「これ、なに」と、こわごわ訊いた。
「それは文という女のお化けです。お前もおとなしくしないと、庭のお池からこういう怖いお化けが出ますよ」
嚇すつもりでもなかったが、お道は何心なくこう云って聞かせると、それがお春の神経を強く刺戟したらしく、ひきつけたように真っ蒼になって母の膝にひしとしがみ付いてしまった。
その晩にお春はおそわれたように叫んだ。
「ふみが来た!」
明くる晩もまた叫んだ。
「ふみが来た!」
飛んだことをしたと後悔して、お道は早々にかの草双紙を返してしまった。お春は三晩つづいてお文の名を呼んだ。後悔と心配とで、お道も碌々に眠られなかった。そうして、これが彼の恐ろしい禍いの来る前触れではないかとも恐れられた。彼女の眼の前にも、お文の姿がまぼろしのように現われた。
お道もとうとう決心した。自分の信じている住職の教えにしたがって、ここの屋敷を立ち退くよりほかはないと決心した。