Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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むらいちょうあんないれのからかさ

村井長庵記名の傘

国枝 史郎

Lee 村井長庵記名の傘 (むらいちょうあんないれのからかさ) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 7794 caracteres · 16 pantallas

Aozora Bunko

三十四五の年格好、顔色青褪め骨突起し、見る影もなく窶れている。目鼻立ちは先ず尋常、才気はどうやらなさそうではあるが、誠実の点では退けを取るまい。孔子のいわゆる仁に近しと云うその朴訥には遺憾がない。

「いかがでござるなご容態は?」

世間並の医者らしく長庵こんなことも訊いて見る。

「長庵老のお蔭をもち近来めっきり元気付きましてござる」

「それはそれは何より結構。どれお脈拝見しましょうかな」

などと口では云いながら心の中では反対である。

「この病気が癒るものか。無比の難症労咳だからな」

形ばかりに脈を見ると。

「今日は大いによろしゅうござる。どれ煎薬でも差し上げましょう。……ところで何時かお尋ねしようと、窃かに存じて居りましたが、ご貴殿ご旧主は誰人様でござるな?」

「おお、拙者の旧主人でござるか」

旧主のことを尋ねられたことが、道十郎には嬉しかったと見え、影の薄い顔へ笑を湛えたが、

「信州上田五万三千石、松平伊賀守が旧主人でござるよ」

「おお左様でござりましたか。伊賀守様はご名門、それに知恵者でおわすとのこと、そういう立派のご主人を離れ、どうしてご浪人なされましたかな?」