Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ますおとし

枡落し

山本 周五郎

Lee 枡落し (ますおとし) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 33.765 caracteres · 67 pantallas

Aozora Bunko

ただ家へ帰りたくないだけで、江戸のほうへ漠然とあるいていった。喉が渇いても空腹に耐えられなくなっても、どうしていいかわからず、鈴ヶ森あたりまでいくとふらふらになり、大きな松の下にある茶店のところでへたばってしまった。

「その茶店で、伊予巴の番頭さんに拾われたんだ」と芳造は云った、「太吉さんていう人だが、四国までたいまいの買付けにいった帰りだったそうで、おれのことを病人だと思ったらしい、おれは孤児で空腹のあまりあるけなくなった、と嘘を云った」

あとにも先にも嘘をついたのはそのとき一度きりだ、と芳造は云った。それが縁で、彼は伊予巴の小僧になることができた。

「わかったろう、おれはこういう育ちかたをしたんだ」と彼は云った、「――いまでもおれは、血反吐を吐いて死んだおやじや、けがらわしいおふくろを忘れることができない、立派な職人にならなくともいい、金も欲しくはない、けれども女房や子供には、どんなことがあっても、おれのようなみじめな思いをさせやあしねえと誓った、どんなことがあっても」

「それからもう一つ」と芳造はすぐに続けた、「おばさんは好きで千太郎という人と夫婦になったんじゃあねえ、おやじさんに云われていっしょになったんだ、それでも無事安穏にいく夫婦もあるだろうが、二人はそうはいかなかった、おばさんに罪があるとは云わ