Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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くりのはなのさくころ

栗の花の咲くころ

佐左木 俊郎

Lee 栗の花の咲くころ (くりのはなのさくころ) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 6440 caracteres · 14 pantallas

Aozora Bunko

突然、そう誰かが、薄暗い土間から立ちあがった。

「私かね? 私は古川の者ですよ。古川の繭商人ですよ。」

嘉三郎はぎょっとしながら、髭を隠して、声色を使ってそう言った。

「併し、よく似た人だがなあ。」

印半纏の土工風の男は首を傾げながら言った。

併し、嘉三郎は、そのまま何も言わずに、残っている冷酒を一息にあおると、忙しく勘定をして、梅雨の暗い往来へ出て行った。

五

饂飩屋の横を、嘉三郎は、黙って奥へ這入って行った。庭に栗の木が一本あって、濡れ葉がばらばらと、顔に触れた。そして、栗の花の香が鼻に泌みた。

ちょうどそこへ、忠太郎がどこかへ出るのらしく、立て付けの悪い板戸を開けたので、薄い光が、幅広い縞になつて流れ出して来た。

「忠太郎!」

嘉三郎はそう声をかけた。

「あれ! お父さんだぞ。美津! お父さんが来た。起きろ。」

忠太郎は狼狽しながら言った。

「美津の病気はどういう具合だ?」

嘉三郎はそう言いながら中へ這入った。

「お父さん!」

美津子は寝床の上へ起き上がって凝っと父親の顔を視詰めた。

「寝てろ! お前が病気だっていうから来て見たのだが、病気は、どんな具合だ?起きてでいいのか?」