Clásicos japoneses con furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lee 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 111.569 caracteres · 222 pantallas
もう一度捨吉は小父さんの家の玄関に、よく取次に出ては御辞儀をして奥の方へ客の名前を通したりその人の下駄を直したりした玄関に、片隅に本箱を並べて置いてそこを自分の小さな天地とした玄関に、悄然と帰って来た自分を見つけた。はかない少年の夢が破れて行った日から、この世の中は彼に取って全く暗く味気なくなってしまい、あの田辺の小父さんが沈んだ彼の心を引立たせようとして面白そうな芝居に誘ってくれようと、あの姉さんが彼の好きそうな縞柄を見立ててどんな着物を造ってくれようと、何一つ楽しいと思ったこともなく、寂しい寂しい月日を独りでこつこつ辿って来たような彼も、今こそ若い日の幸福を――長い間、自分の心に求めていたものを見つけたように思って来た。その寂しい月日が長かっただけ、心を苦めることが多かっただけ、それだけ胸に満ちる歓喜も大きなもののように思って来た。
しかし、捨吉がその歓喜を感じ得る頃は、やがて何等の目的もない旅に上ろうとしている時であった。青木も心配して、菅と連立って、田辺の家に捨吉を見に来た。
間もなく新しい正月が来た。町々を飾る青い竹の葉が風に萎びてガサガサ音のするような日の午後に、捨吉は勝手口の横手にある井戸の側を廻って物置から草箒と塵取とを持って来た。