Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ばいしのつえ

梅颸の杖

吉川 英治

Lee 梅颸の杖 (ばいしのつえ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 15.966 caracteres · 32 pantallas

Aozora Bunko

今夜あ、思いを達したんで、欣しくてしようがありませんから、あっしがお奢りいたしますが』

山陽は、吹き出したくなった。

『来い、来い。わしが運れて行ってやる』

そして、新町へ行ってしまった。

×

濃粧した女たちの顔や姿が、部分部分に分れてぐるぐる廻る。あつい白粉、紅、まゆずみ、だらり帯、舞扇、太鼓の皮。

錦出の皿にも、あくどい色の食物が、あたりの空気にふさわしく盛ってあった。朱塗の燭台には、ひとつひとつ淫らな灯があがっている。

しんしんと三味線の革が頭に痛い。酒、酒、酒、酒。

そんな光彩とそんな音律が、山陽の頭のなかに、ぼうっと、紅色の埃か、油のういた溝の泡つぶのように、消えたり、舞ったりしていた。――だが事実は、彼ひとりで、そういう物象が物の怪のように消えてしいんと大広間に、友禅の夜具をかけられて、死骸のように寝ていたのである。

肩先の寒さに、眼をさました。

そして、宿酔の苦しい意識を辿って、ぼんやりと考えてみると、ゆうべ、ごまの蠅の四郎次をつれてこの家へあがると、隣り座敷に混沌詩社の若い詩人たちが来合せて、遂に一座になったことを記憶している。