Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Lee 榎物語 (えのきものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 33.519 caracteres · 67 pantallas

Aozora Bunko

健次というその男は、江戸で自分の店が持てたという、こんどは小千谷へ買い付けに来たのだが、おすげが生きていて、二人は必ず会えるものと信じていた。そうでない場合のことなど、疑ってみたことさえなかったそうである。本当なら小千谷へいって来るまで待っているところであるが、もういっときもはなれてはいられないから、明日いっしょに小千谷へゆき、そのまま江戸へ立つことにした。おすげは片づけ物をしながら、朝の雀がさえずるように、休みなしにこれらのことを語った。

翌朝はやく、さわの家へ二人がおとずれた。健次という男はいかにも商人らしく、腰の低いあいそのいい若者で、おすげが世話になった礼を述べ、もし江戸へ出るようなことがあったら、本所のしかじかというところへ訪ねてくれ、とお世辞でない口ぶりで云った。小千谷から戻るときに、もういちど寄るといったが、二人はそれ限り顔をみせなかった。――また独りで茶をたてることになり、暫くのあいださわは淋しさを感じた。けれども、独りになった淋しさより、その出来事から与えられた勇気のほうが大きかった。心から愛しあい信じあっている者は、いつか必ず会うことができる。