Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lee 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 167.285 caracteres · 330 pantallas

Aozora Bunko

「人間はみな自分が可愛い」と安芸が云った、「大藩は大藩なりに、わが身が大事と思うのであろう、結束すれば大きな力となるものを、対岸の火事に水を貸さず、やがておのれも孤立することに気づかぬのだ」

「私はまだ、諦めてはおりません、奥村どのにもなお会い、さらにしかるべき重役とも会うつもりです」

「わたしはむだだと思うが」と安芸は首を振った、「しかしそれは船岡に任せるとしよう、――ときに、里見十左衛門には会ったか」

「いや、彼にはみすてられましたから」

「十左にみすてられたと」

安芸はいぶかしそうな眼つきで甲斐を見、それからすぐに、おう、と微笑しながら、うなずいた。

甲斐は茶をすすった。

十左を煽動したのは安芸であった。甲斐が一ノ関の与党になった、ということを云いだし、「あまり近づかぬがよい」と、いうふうな暗示を与えた。十左だけではなく、必要とみたとき、必要と思える者には、みなそういう印象を与えて来たのである。安芸はむかしから、甲斐の性格をよく知り、深い信頼をもっていた。あまりに老成しているのと、どこかつかみどころのない点があって、そこに多少の不安はあったが、頼むに足る人物であることに、間違いはないと思っていた。