Clásicos japoneses con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lee 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 167.285 caracteres · 330 pantallas
「もう少しゆっくり飲んだらどうだ、苦しくなるぜ」
「あんたにはまだ、女の本当の気持はわからないのよ」とおみやは続けた、「あたしが証書を盗みだしたのは、惚れている気持がきれいに無くなっちまったからさ、なんだい男のくせに、男で侍のくせにさ、せっかく真人間になろうと思っている女に、よくもそんなことが頼めたもんだ、義理だか忠義だか知らないけれど、あたしみたような女の力を借りなければならないで、それでも男で侍で候と云えるかってんだわ」
「わかった、もうそのくらいでよしにしろ」
「よすもんか、お酒がないじゃないの、新さん」
「それ以上飲むと、苦しくなるぜ」
新八はとめたが、おみやは手を叩いた。横坐りに膝は崩しているが、まだ躯はしゃんとしており、口のききようも歯切れがよかった。茶屋の女が酒を持って来、空いた器物を片づけて去るあいだも、おみやは辛辣な調子で云い続けた。
あの証書を盗みだすのに二年かかった。みつかれば命はない、いっそやめようかと思ったこともある。だがもう意地であった。女の意地からも、盗みだして、あの人に叩きつけてやりたかった。
「本当はあたし、さっきあの人を犬のように這わせてやるつもりだったのよ」