Clásicos japoneses con furigana
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みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
Lee 水戸梅譜 (みとばいふ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 12.607 caracteres · 25 pantallas
――この落着かぬ気持はなんだろう。自分の心を自分でふりかえっていると、さっきから脇に控えていた従者のひとりが、すっとすり寄って、囁くように云った。
「申上げます、わたくしあの若者には見覚えがございます」
「……どういう者だ」
「御参覲のお供のうしろへ、いつも跟いてまいる素性の知れぬ男がございました、このたびお国入りのおりわたくし共あい計り、前後から追い詰めて捕えようと存じましたが、かの者はやはりすばやく逃げ去りました、しかしそのとき編笠がぬげ、はじめて面躰をあらわしましたので、わたくし篤と人相を見覚えております、たしかにかの男に相違ございません」
そのときのことは光圀もまだ忘れてはいなかった、それであらためて五郎兵衛の顔を見なおした。心の底にかくれている記憶が、意識のおもてへあらわれる機縁は無数である。さっきから光圀を落着かせなかったものが、いまあらためて五郎兵衛を見なおしたとき、思いがけぬあざやかさで十六年まえの或る日の記憶をよみがえらせた。――そうだ。光圀は思い当ると堪えられなくなり、甚四郎をまねいて自分が訊問しようと云った。
「お上おじきでございますか」