Clásicos japoneses con furigana
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なきむしこぞう
泣虫小僧
林 芙美子
Lee 泣虫小僧 (なきむしこぞう) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 34.906 caracteres · 70 pantallas
名刺の裏を見ると、渋谷区幡ヶ谷本町としてあった。勘三は、不図、寛子と所帯を持った頃の三四年前の幡ヶ谷のアパートの事を思いだすのだ。芝居裏のような歪んだ梯子段をあがって、とっつきの三畳の間を月五円で借りていたが、その頃は学校の出たてでまだ貧乏しても希望があったが、子供が出来て六年にもなり、自分の書くものが一銭にもならないとなると、海の真中へ乗りだしてしまったような茫然とした気持ちで、どうにも方法がつかない。
「まま乗り出したこっちゃい! ええッ、どうにかなりますわい」
「女のひとンところへ届けに行くの?」
「ああ届けてやることにしよう。まア、待てよ、叔母さんのところへ電話かけて見なくちゃア……」
勘三は、そう言って、青いハンドバッグの財布の中から五銭玉一つ出して、ガレージのそばの自動電話へ這入って行った。
「もしもし……お菅さん? ねえ、厄介なことなンだ。そうさ。家庭争議を起しちまって、それも啓坊の事なンだけど、君ンところで二三日預かってくンないかねえ……ん、そりゃア困るなア、じゃお蓮さんの所へ置いとくか、ん、新所帯で気の毒だけど、何しろ意地を曲げてしまって、啓坊は可哀想だけど、姉さんがどうしても憎いっていうんだ。