Clásicos japoneses con furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lee 澪標・落日の光景 (みおつくし) de 外村 繁 (とのむらしげる) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 130.889 caracteres · 268 pantallas
私はその事輪の響きに合わせ、いつか鉄道唱歌などを口遊んでいる。しかし子供等の手前もある。声を発してはならない。私は口を噤み、鼻で呼吸しているのであるから、口と鼻との間で、声にならない声で唱っているのである。
不意に、私の頭の中に、一つの空席が浮かび上る。現に、この茶の間の妻の座は空いている。勿論、勤務先の妻の椅子も空である。妻が乗っているはずの汽車の、妻の席はどうなっているか。私の酔いに乱れたスポットライトに照し出された妻の席には、妻の姿はない。そうしてその車窓の下の空席は、空席のまま私の方に向かって走り続けている。
翌朝、しかし妻は土産物の包みを両手に提げて、勢よく帰って来た。
その頃の私達の生活は尋常のものではなかった。長男は北海道の大学へ行っている。毎月の送金を欠かすことはできない。二男は都大生である。三男と長女は高校生である。四男は中学生である。更に郷里の母の許へも送金しなければならない。広い郷里の家の維持費だけでも容易でない。私は母に度度上京を進めるが、母は頑として聞き入れない。
春になると、東の裏にはうどが柔かい芽を出す。三つ葉も庭一面にはびこる。