Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

Lee 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 86.705 caracteres · 173 pantallas

Aozora Bunko

それが、誰いうとなく煩悩夜盗の名を取った謂れでもあるが。

襖に、あるいは障子に、畳に、墨黒ぐろと大きな文字「煩悩」と――いつもきまって被害の現場に、雄渾な筆跡を揮ってある。出張の役人、公儀、江戸中の人々を嘲るごとく、あわれむごとくに――。

一度などは、日本橋の質屋へはいった時、文晁の屏風いっぱいにこの煩悩の二字が殴り書に遺されてあった。

御府内を恐怖と、疑惑の淵に追いこんでいる、この煩悩夜盗!

それが再び活躍をはじめたというので、

「もっとも、おめえが旅に出ていたこの十日間がほどは、煩悩小僧もじっとおとなしくしていたとみえて、押込みの届出もねえようだが――。」

川俣伊予之進が、しずかに言っていた。

何か思案の底に沈んでいた宗七は、この時、いつになく蒼白く緊張した顔を上げて、

「あっしが山へ行ってるこの十日のあいだは、煩悩小僧も出なかったとおっしゃるので。」

「宗七! おめえ何か心当りがあるんじゃあねえのか。」

心あたり?――なくてどうしよう!

彼にとって忘れることのできない、「煩悩」の語を冠した賊ではないか。

何者の仕業? ということは、宗七には早くから眼あてがついているのだけれど――その煩悩小僧の目的を知っている彼としては、手をだしたくない。