Clásicos japoneses con furigana
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こぶ
犬田卯短編集 一
犬田 卯
Lee 犬田卯短編集 一 (こぶ) de 犬田 卯 (いぬたしげる) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 48.259 caracteres · 96 pantallas
圭太は死んでもいいと思った。
「そら、こん畜生!」と言ってさぶちゃんに再びステッキを食わせられた瞬間、彼は腰に力を入れ、両脚を踏みしめ、しっかりと胸に鞄を抱き、右手だけをやや水平に差し伸べて、そして一歩踏み出した。
――みんなが渡るんだ。俺にだけ渡れないということはあるまい!
だが、二歩、三歩――もう駄目だった。眼の前には、長い長い糸のような欄干が、思いなしか蛇のようにうねうねして伸びている。その前後左右、また上下は、渦巻く青い流れであり、無限の空間である。糸――どこまでつづくか分らぬそのたった一本の糸のみが、自分を支えてくれる、そして自分の行かなくてはならぬ道である。
彼はふらふらとして、そのままぺしゃんこと、欄干へ蟹のようにへばりついてしまった。
「こら、臆病奴!」
「野郎、突き落せ!」
「突き落せ!」
実際、圭太の片足へ腕白どもの手が何本か、かかった。へばりついた手をひっぺがそうとするものもあった。
だが、圭太はその時立ち上っていた。さぶちゃんやその手下のものを払い退けるようにして再び渡り出した。
彼はもう前後左右も、青い渦巻く流れも、大空も何も見なかった。