Clásicos japoneses con furigana
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しんようどうき
申陽洞記
田中 貢太郎
Lee 申陽洞記 (しんようどうき) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 5175 caracteres · 11 pantallas
番兵の一人が驚いたように眼をきょろきょろとさした。
「私は、府城の中に住む医者でございますが、薬を取りにきて、あっちこっちと歩いているうちに、足を滑らして、陥ちて困っておるところでございます」
李生は恭しく礼をしながらでまかせを言った。
「では、お前は医者か、医者なら手創の療治ができるか」
李生はうっかりすると甚い目に逢うから、ここが大切だと思った。そう思う心の下から、ある皮肉な考えがちらと浮んできた。
「私は好い薬をもっております、手創が治るばかしでなしに、それを飲むと、不老不死が得られます」
「そうか、それは天が神医を与えてくだされたのじゃ、大王申陽侯が昨日遊びに往かれて、流矢に当って苦しんでおられる、お前の薬を頼みたい、こっちへきてくれ」
その番兵は李生を連れて石室の中へ入って往った。石室の中にも昨夜古廟で見た姿の者が、そこにもここにも眼を光らして腰を掛けていた。
「ここで、控えておってくれ、大王に伺うてくる」
番兵は奥の方へ入って往った。李生はそこにあった牀に腰をかけて待っていた。
間もなく番兵が引返してきた。
「大王が非常に悦んでおられる、早く往って療治をしてあげてくれ」