Clásicos japoneses con furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lee 痴人の愛 (ちじんのあい) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 179.399 caracteres · 353 pantallas
私のような男はただその前に跪き、崇拝するより以上のことは出来ないところの、貴い憧れの的でした。もしも彼女の、あの真白な指の先がちょっとでも私に触れたとしたら、私はそれを喜ぶどころか寧ろ戦慄するでしょう。この心持は何に譬えたら読者に了解して貰えるか、―――まあ云って見れば、田舎の親父が東京へ出て、或る日偶然、幼い折に家出をした自分の娘と往来で遇う。が、娘は立派な都会の婦人になってしまって、穢い田舎の百姓を見ても自分の親だとは気が付かず、親父の方ではそれと気が付いても、今では身分が違うために傍へも寄れない、これが自分の娘だったかと驚き呆れて、耻かしさの余りコソコソ逃げて行ってしまう。―――その時の親父の、淋しいような、有難いような心持。それでなければ許嫁の女に捨てられた男が、五年も十年も立ってから、或る日横浜の埠頭に立つと、そこに一艘の商船が着いて、帰朝者の群が降りて来る。そして図らずもその群の中から彼女を見出す。さては彼女は洋行をして帰って来たのかとそう思っても、男は最早や彼女に近づく勇気もない。自分は昔に変らない一介の貧書生、女はと見れば野暮臭い娘時代の俤はなく、巴里の生活、紐育の贅沢に馴れたハイカラな婦人、二人の間には既に千里の差が出来ている。