Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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めらはかせのふしぎなはんざい

目羅博士の不思議な犯罪

江戸川 乱歩

Lee 目羅博士の不思議な犯罪 (めらはかせのふしぎなはんざい) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 15.493 caracteres · 31 pantallas

Aozora Bunko

「ホラね、もしあの木切れが、本当の刀だったらどうです。あの小猿、とっくにお陀仏ですよ」

広い園内はガランとして、人っ子一人いなかった。茂った樹々の下陰には、もう夜の闇が、陰気な隈を作っていた。私は何となく身内がゾクゾクして来た。私の前に立ている青白い青年が、普通の人間でなくて、魔法使かなんかの様に思われて来た。

「真似というものの恐ろしさがお分りですか。人間だって同じですよ。人間だって、真似をしないではいられぬ、悲しい恐ろしい宿命を持って生れているのですよ。タルドという社会学者は、人間生活を『模倣』の二字でかたづけようとした程ではありませんか」

今はもう一々覚えていないけれど、青年はそれから、「模倣」の恐怖について色々と説を吐いた。彼は又、鏡というものに、異常な恐れを抱いていた。

「鏡をじっと見つめていると、怖くなりやしませんか。僕はあんな怖いものはないと思いますよ。なぜ怖いか。鏡の向側に、もう一人の自分がいて、猿の様に人真似をするからです」

そんなことを云ったのも、覚えている。

動物園の閉門の時間が来て、係りの人に追いたてられて、私達はそこを出たが、出てからも別れてしまわず、もう暮れきった上野の森を、話しながら、肩を並べて歩いた。