Clásicos japoneses con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lee 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 222.108 caracteres · 446 pantallas
「……?」
桜の木肌が生々と白く削りとられている。のみならず、それへ墨書きがしてあった。樹脂の滲みで読みづらく墨は散っている。いや高徳には、読むにはやっと読みえたものの何の意味か解しかねた。
天莫空勾践
時非無范蠡
彼は立ち暮れた。
これで昨日から三つの謎に試されていると彼は思った。第一は廉子である、次は佐々木道誉だ、そしてまた、と高徳はただその詩句のような文字に見入るばかりだった。
「おおっ」
そのうちに、彼はあたりを忘れたような声を発した。詩句の意味が解けたのではない。これを書いた人に違いない者の姿を見たのである。その人は、さながら放心した人間のように、やや遠くの桜の根方に、独り膝を抱いてうずくまっていた。
それは、大覚ノ宮だった。高徳が捜しあぐねていたその人に間違いなかった。
彼の声に、宮も、
「あ。そちは?」
花の下の跼まりから醒めたように、そして、なおどこかには、茫然としたものを脱しきれない顔でもあった。
「いったいどうなされたことでございますな。おとといの夜、ここでお姿を見失うてから、この高徳、どれほどお捜し申していたかしれませぬ」
「知れぬはず、佐々木道誉という者の手に捕われて、つい今暁まで宿所の土倉に籠められていたのだ。