Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lee 私本太平記(四) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 229.324 caracteres · 458 pantallas

Aozora Bunko

「兄者」

直義はふりかえって。

「ごらんなされませ、鎌倉の府もはや遠くになりました」

「むむ。思い出はいろいろ多いな。よくぞ、きょうまで住まわせてくれた鎌倉だった」

「もはやお還りにはならぬお覚悟で?」

「わからぬ。あしたのことなどは」

「それはそうだ、身の一命すらあしたの先は。しかし今日の幸先は上首尾でございましたな。時も時、源家重代の白旗が授かるなどは」

「それこそは」

と師直が、とっさに、ことばをさしはさんだ。

「神意とか吉兆とか申すものでございましょうぞ。なんとなれば、源家の白旗は、ほんらい平氏の北条家にあるよりは、源氏の家につたわって来るはずのもの。はからず、それが今日のご出陣にお手に入るとは、偶然ではござりませぬ」

「む、偶然ではない!」

直義も言った。

また高氏もうなずいた。そして胸にかけていた旗ぶくろの緒を解いて、

「掲げて行け」

と、それを、旗手の武者へわたした。

ふるびてはいるが、まだ生きていたかのような灰白色の一旒が、旗竿のさきにたかくひるがえった。――高氏はひとみをあげてその流動に見とれた。十年の思いがいま虚空に呼吸をえている姿にみえる。また、日ごろ崇拝していた頼朝の加勢をいま証に見たかともおもった。