Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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そろばんがこいをかたるはなし

算盤が恋を語る話

江戸川 乱歩

Lee 算盤が恋を語る話 (そろばんがこいをかたるはなし) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 8096 caracteres · 16 pantallas

Aozora Bunko

やがて夜が来ました。広場のところどころに立てられた電燈が寒く光り始めます。こうなると、さすがのTも不安を感じないではいられませんでした。

「ひょっとしたら、家の首尾が悪くて出られないのかも知れない」

今では、それが唯一の望みでした。

「それともまた、おれの思い違いではないかしら。あれは暗号でもなんでもなかったのかも知れない」

彼はいらいらしながら、その辺をあちらこちらと歩き廻るのでした。心の中がまるで空っぽになってしまって、ただ頭だけがカッカとほてるのです。S子の色々の姿態が、表情が、言葉が、それからそれへと目先に浮んで来ます。

「きっと、彼女も家でくよくよおれのことを心配しているのだ」

そう思う時には、彼の心臓は熱病の様に烈しく鳴るのです。しかし、またある時は身も世もあらぬ焦燥が襲って来ます。そして、この寒空に来ぬ人を待っていつまでも、こんな所にうろついている我身が、腹立たしい程愚に思われるのです。

二時間以上も空しく待ったでしょうか。もう辛抱し切れなくなった彼は、やがてとぼとぼと力ない足どりで山を下り始めました。

そして山の半ば程降りた時です、彼はハッとした様にそこへ立ちすくみました。