Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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そこつひょうばんき

粗忽評判記

山本 周五郎

Lee 粗忽評判記 (そこつひょうばんき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 13.942 caracteres · 28 pantallas

Aozora Bunko

久之進は身を退いた。そして静かに数えながら三十歩だけ遠退き、振返って大剣の鞘を払った。小萩は馬上のままである、籐の箭を二本抜取り、一本を弦に、一本を命矢にしてきっと馬の上に伸上った。久之進は大剣を正眼につけた……そよとの風もない早春の麗日、増上寺の森で渡り遅れた鵯の鳴く声が、ときおり静かな空に聞えるほかは、なんの物音もしない、十人の女中たちはさすがに息を詰め、手綱をひしと汗にしながら見戍っていた。

小萩は弓をひきしぼった。ききききと微妙に巻籐がきしむとみるや、ひゅうっと久之進の胸板ま正面を狙って電光のごとく飛ぶ矢、えい、という叫びとともに大剣が空を截る、矢は二つに折れて右手へ落ちた。小萩は措かせず二の矢である、しかし三の矢も四の矢も、見事に久之進は払い落した。踏開いた両足はまだ一歩も動いていないのである、小萩の額は蒼みがかり、しかもふつふつと汗が滲み出ていた。

「お待ちなさい」久之進がとつぜんこう叫んだ、「その矢は射させぬぞ」

「…………」

「射てみられい、いざ」

叫ぶとともに右足を踏出し、籠手下りに刀を執ってはたと相手の眼を見た。小萩は五の矢、最後の矢を弦に番えて、馬の上に伸上ってきっと呼吸を計った。