Clásicos japoneses con furigana
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えんようき
艶妖記
山本 周五郎
Lee 艶妖記 (えんようき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 18.761 caracteres · 38 pantallas
こう云って彼はそのへんから杉の枯枝を集めて来、祠の縁下に押し込んで燧袋を取り出した。そして燧石をかちっと打ったとき「ちょっと待て」という声が聞こえた。八百助はびっくりしてまわりを見まわした。もちろんどこに誰がいるわけでもない、それで、
「今のは曾古津様の声ですか」ときいてみた。祠はしんとしてそうだとも違うとも答えない、八百助は空耳だったと思って怒り直し、忿然としてまた燧石をかちっと打った、そのとたんにこんどはもっとはっきり「待ってくれ」
と云う言葉が聞こえた。彼は二三度やり直したうえ、燧石を打つとその声が聞こえることをたしかめた、そして次のように問答を始めた。
「あなたは曾古津様ですか」「そうだ」
「私の一家の不幸を知っていますか」
「どうも面目ない」曾古津様はこうおっしゃった、
「わしも二千百十九年と九カ月になるので、眼も耳もよくきかないしなにもかも億劫なものだから、ついついなにしていたわけだが、とにかくこの住宅を焼くのだけは勘弁してくれ、この年になって部屋借りをするのも体裁が悪いから」
「では私の願いを聞いてくれますか」
「一つだけなら聞こう、おまえの先祖たちにだいぶ振り出したのでわしもだいぶ手許が苦しいんだ」