Clásicos japoneses con furigana
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
Lee 菜穂子 (なおこ) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 88.758 caracteres · 173 pantallas
彼は暫くうっとりとした眼つきでその枝の網目を見上げていたが、再び背中を曲げて歩き出した時にはもうそれを忘れるともなく忘れていた。しかし彼の方でもうそれを考えなくなってしまってからも、その記憶は相変らず、殆ど肩でいきをしながら、喘ぎ喘ぎ歩いている彼を何かしら慰め通していた。「このまんま死んで行ったら、さぞ好い気持ちだろうな。」彼はふとそんな事を考えた。「しかし、お前はもっと生きなければならんぞ」と彼は半ば自分をいたわるように独り言ちた。「どうして生きなければならないんだ、こんなに孤独で? こんなに空しくって?」何者かの声が彼に問うた。「それがおれの運命だとしたらしようがない」と彼は殆ど無心に答えた。「おれはとうとう自分の求めているものが一体何であるのかすら分らない内に、何もかも失ってしまった見たいだ。そうして恰も空っぽになった自分を見る事を怖れるかのように、暗黒に向って飛び立つ夕方の蝙蝠のように、とうとうこんな冬の旅に無我夢中になって飛び出して来てしまったおれは、一体何を此の旅であてにしていたのか? 今までの所では、おれは此の旅では只おれの永久に失ったものを確かめただけではないか。