Clásicos japoneses con furigana
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
Lee 菜穂子 (なおこ) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 88.758 caracteres · 173 pantallas
一日は他の日のように徐かに過ぎて行った。
そういう孤独な、屈托のない日々の中で、菜穂子が奇蹟のように精神的にも肉体的にもよみ返って来だしたのは事実だった。しかし一方、彼女はよみ返ればよみ返るほど、漸くこうして取戻し出した自分自身が、あれほどそれに対して彼女の郷愁を催していた以前の自分とは何処か違ったものになっているのを認めない訣には行かなかった。彼女はもう昔の若い娘ではなかった。もう一人ではなかった。不本意にも、既に人の妻だった。その重苦しい日常の動作は、こんな孤独な暮しの中でも、彼女のする事なす事にはもはやその意味を失いながらも、いまだに執拗に空を描きつづけていた。彼女は今でも相変らず、誰かが自分と一しょにいるかのように、何んと云う事もなしに眉をひそめたり、笑をつくったりしていた。それから彼女の眼ざしはときどきひとりでに、何か気に入らないものを見咎めでもするように、長いこと空を見つめたきりでいたりした。
彼女はそう云う自分自身の姿に気がつく度毎に、「もう少しの辛抱……もう少しの……」と何かわけも分からずに、唯、自分自身に云って聞かせていた。
七