Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Lee 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 198.559 caracteres · 401 pantallas

Aozora Bunko

最上の戦には一語をも交うる事を許さぬ。拈華の一拶は、ここを去る八千里ならざるも、ついに不言にしてまた不語である。ただ躊躇する事刹那なるに、虚をうつ悪魔は、思うつぼに迷と書き、惑と書き、失われたる人の子、と書いて、すわと云う間に引き上げる。下界万丈の鬼火に、腥さき青燐を筆の穂に吹いて、会釈もなく描き出せる文字は、白髪をたわしにして洗っても容易くは消えぬ。笑ったが最後、男はこの笑を引き戻す訳には行くまい。

「小野さん」と女が呼びかけた。

「え?」とすぐ応じた男は、崩れた口元を立て直す暇もない。唇に笑を帯びたのは、半ば無意識にあらわれたる、心の波を、手持無沙汰に草書に崩したまでであって、崩したものの尽きんとする間際に、崩すべき第二の波の来ぬのを煩っていた折であるから、渡りに船の「え?」は心安く咽喉を滑り出たのである。女は固より曲者である。「え?」と云わせたまま、しばらくは何にも云わぬ。

「何ですか」と男は二の句を継いだ。継がねばせっかくの呼吸が合わぬ。呼吸が合わねば不安である。相手を眼中に置くものは、王侯といえども常にこの感を起す。いわんや今、紫の女のほかに、何ものも映らぬ男の眼には、二の句は固より愚かである。