Clásicos japoneses con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lee 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 198.559 caracteres · 401 pantallas
「じゃ、こんな色ですか」と女は青き畳の上に半ば敷ける、長き袖を、さっと捌いて、小野さんの鼻の先に翻えす。小野さんの眉間の奥で、急にクレオパトラの臭がぷんとした。
「え?」と小野さんは俄然として我に帰る。空を掠める子規の、駟も及ばぬに、降る雨の底を突き通して過ぎたるごとく、ちらと動ける異しき色は、疾く収まって、美くしい手は膝頭に乗っている。脈打つとさえ思えぬほどに静かに乗っている。
ぷんとしたクレオパトラの臭は、しだいに鼻の奥から逃げて行く。二千年の昔から不意に呼び出された影の、恋々と遠のく後を追うて、小野さんの心は杳窕の境に誘われて、二千年のかなたに引き寄せらるる。
「そよと吹く風の恋や、涙の恋や、嘆息の恋じゃありません。暴風雨の恋、暦にも録っていない大暴雨の恋。九寸五分の恋です」と小野さんが云う。
「九寸五分の恋が紫なんですか」
「九寸五分の恋が紫なんじゃない、紫の恋が九寸五分なんです」
「恋を斬ると紫色の血が出るというのですか」
「恋が怒ると九寸五分が紫色に閃ると云うのです」
「沙翁がそんな事を書いているんですか」
「沙翁が描いた所を私が評したのです。――安図尼が羅馬でオクテヴィアと結婚した時に――使のものが結婚の報道を持って来た時に――クレオパトラの……」